遺言書には、まず普通方式と特別方式があります。ここではその中から一般的なものを選んで説明します。
自筆証書遺言とは、自分で全てを自筆で作成する遺言書です。これは、遺言書の存在を誰に知られることもなく、費用も小さくて済むという利点があります。遺言書作成のノウハウを熟知している場合は、これが最も簡単な手段です。
しかし、日本における遺言の規定は非常に厳格であり、一般の方が参考書を読みながら作っても、法的な効果をもつための基準を充たさず、執行されないということが多くあります。執行されなければ、あなたが死んだ後も守ってあげたいと思う人がいても、その願いは叶わないことになります。また、偽造や紛失、盗難の恐れがあります。また、開封時に家庭裁判所の検認続きが必要となり、手間もかかります。
ただ、(1)不動産などの高額な財産がない、(2)専門家と相談しながら作成する、といった場合は、自筆証書遺言でも構わないでしょう。もし仮に無効となっても、遺産が少なかったり、分割できない不動産などがなければ、相続人間の争いが起こることも少ないでしょう。また、専門家と相談しながら作れば、自筆証書遺言が有効となる確率は上がるでしょう。
公正証書遺言とは、法務省大臣により任命される公証人が作成する遺言書です。公正証書遺言のメリットは、(1)公証人が作成するため、形式の不備などで無効となってしまう事態を防げる、(2)公証人が作成するため、文書に対する信用が高く、検認の手続きが不要で、被相続人の死後すぐに開封できる、(3)公正証書は全国の公証人役場で、その存在の検索や、内容の確認ができる、(4)公正証書は公証人役場で保管されるため、偽造の恐れが少ない、(5)体の不自由な方でも、言葉で遺言内容を公証人に伝えることさえできれば作成できる、(6)何らかの理由で公証人役場まで行くことができない場合、出張を依頼することもできる、といったことです。
公正証書遺言を選ぶべき場合としては、(1)確実に叶えたい願いがある、(2)不動産など高額な財産がある、(3)特別な理由で自筆証書遺言がつくれない、(4)「廃除」など、相続人の遺留分を損なうような遺言をする、といった場合があります。